《空馬羽津呂》◆ 第二章 占い＝情報デザインである 1.占いは未来を言い当てるものではない
◆ 第2章 占い＝情報デザインである
1 占いは未来を言い当てるものではない
占いというと、「未来を当てるもの」というイメージが今でも根強くあります。
しかし、私が日々クライアントの方と向き合うなかで強く感じるのは、占いは“当てる”ためのものではなく、“整える”ための技術だということです。
未来とは、決められたレールのように存在しているのではなく、選択と行動の積み重ねの先に自然と形づくられていきます。
つまり、未来は「予測」するものではなく、「デザイン」していくものなのです。
この考え方は、実はバウハウスの哲学と深くつながっています。
バウハウスが重視したのは、“形”を先に作るのではなく、“意図”や“構造”を明確にすることです。
家具ひとつ、建築ひとつにしても、コンセプトが曖昧なままでは、美しくも、使いやすくも、長持ちもしません。
意図があり、構造が整理され、それに沿った形が生まれた時、はじめてそのデザインは機能し始めます。
占いもまったく同じです。
占い師が行っているのは「あなたの未来はこうなりますよ」という一方的な予告ではありません。
クライアントの現在地、価値観、望む方向性、そして抱えている不安をひとつずつ整理し、人生という地図上で“どのルートがもっともスムーズか”を一緒に見つけていく作業です。
これは、まさに情報のデザインなのです。
良い占いは、「あなたはこうなる」と断定するのではなく、「この選択をするとこういう動きが生まれますよ」という“因果の構造”を示します。
するとクライアントの思考の中で、今まで絡まっていた糸がほどけるように、進むべき方向が見えてきます。
この時、人生の“形”がすでに動き出しています。
バウハウスの言葉でいえば、
形態は機能に従う。
人生も同じで、思考の整理という“機能”が整えば、おのずと現実という“形態”もその方向に変わり始めるのです。
そしてもうひとつ大切なことがあります。
占いは、クライアントの「心」を扱う仕事である以上、決して恐怖を植え付けたり、依存を生むものになってはいけません。
バウハウスが“本質以外の装飾を排除した”ように、占いもまた、不要な不安や迷いを削ぎ落とし、本当に必要な情報だけを残します。
占いとは未来予測ではなく、人生の“情報整理”であり“意図設計”であり、そして“現実の動線を整える”ためのデザイン行為です。
未来は与えられるものではありません。
未来は デザインするもの なのです。
